渋谷の歴史は電車のターミナルから始まり、繁華街として、買物、飲食、娯楽、文化を楽しむ場所であった。ある時期は日本の流行の先端をいくまちとして見られていたかもしれない。
その延長上で現在の渋谷を評価すると、工事中ということもあり、その魅力が相対的に低下しているとされるのも仕方ないだろう。銀座、日本橋、新宿、池袋、六本木、品川、秋葉原などと、比較してみると現時点では停滞しているようにも見える。どこのまちもそれぞれの特徴を基盤にして発展している中で、渋谷は再開発の真っ最中。パルコがなくなり、東急プラザも渋谷公会堂もいつのまにかなくなってしまった。駅も乗り換えが不便になっていて、利用したくない、という声は少なくない。
しかし、いつも大きく変わるのが渋谷である。山手の買物のまちからいつのまにか若者のまちになった。そしてその中心も動いている。百軒店、道玄坂、中央街、センター街、公園通り、文化村通りと、時代により賑わった場所が違い、どこが渋谷なのか分からない。
では、未来の渋谷がどうなるのか。確実なことのひとつに高層のオフィスビルが増えること。渋谷に高層のオフィスビルができたのは2000年竣工の渋谷マークシティ、2001年のセルリアンタワーから。それ以前のオフィスビルは小型だった。
その後2012年に渋谷ヒカリエがオープンし、その後は2018年秋に渋谷駅の南側で工事中の渋谷ストリームがつづく。2019年には道玄坂上と宇田川町にも高層オフィスビルが竣工して、2020年初頭には渋谷駅周辺最大規模で地上47階の渋谷スクランブルスクエアーと東急プラザ跡に地上18階のビルができる。さらにその後には桜ヶ丘の再開発事業が計画されている。
2020年には高層オフィスビルで働く人の数は現在の3倍に膨らむことだろう。ビジネスでの来街者が増える。そしてその顔ぶれは国際色豊かなものになるはず。
もうひとつ、渋谷の特徴として際立っているのは、高級住宅地が繁華街に隣接していること。宇田川町に建設中の21階建てオフィスビルにも住居フロアができる。更に渋谷公会堂の跡地に2020年9月完成予定とされる地上39階の分譲マンションは渋谷近辺での高級住宅へのニーズを反映しているものといえよう。南平台でも大型のマンション建設がはじまっている。それらへの入居者の外国人比率も気になるところ。
渋谷の未来のキーワードは、オフィス、高級住宅、外国人。商業施設もそれにならうのではないか。「若者のまち渋谷」は若者が多かった時代のことであろう。
Bunkamuraの文化村通り側とオーチャードホール側の違いこそが渋谷のまちの特徴であり、将来も渋谷らしさとなろう。少なくとも東京ではどこにもない街の姿なのである。