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2024年12月

目黒区民センター建替え事業の公募中断から(2024-12-20)

目黒川沿いにある目黒区民センター建替え事業の公募に対し、参加意向のあるすべての事業者グループから、現在の公募条件での提案が困難であるとの旨の意見が10月に出たのを受け、目黒区は当事業の公募を一旦中断すると1218日に発表しました。工事費等の急激な上昇により、予算内での提案が困難との判断があったとのことです。

 若干飛躍しますが、工事費は現在進められているすべての再開発事業に影響することは想像できます。区民センターは家賃収入を工事費増分上乗せすることができませんが、都市再生プロジェクトなどの再開発事業は、期待家賃収入を膨らませているのでしょうか。20253月に街びらきを予定しているTAKANAWA GATEWAY CITYから2031年竣工予定の六本木5丁目プロジェクトまで、巨大再開発事業が日本橋・八重洲、日比谷、次々と進められています。渋谷もスクランブルスクエアビルの中央棟・西棟の竣工で終わらず、宮益坂方面で2つの大規模再開発事業が計画されています。

 これらはいずれもインバウンド消費に対応するためのようなのですが、一つ一つの計画を積み上げたときにどうなるかの検討がされているようには見えません。新設される延床面積の合計に見合う需要は計算されているのでしょうか。成功する再開発事業はあるにせよ、すべてが計算通りにいくのかどうか。

 ところで、駒場東大前駅西口の国有地は、関東財務局が提示する条件に見合う形での事業提案が求められ、それに近隣住民の希望を織り込む形で一旦事業者が決定しました。しかし工事費等の上昇が理由かどうかはわかりませんが、現在白紙の状態となっています。関東財務局が提示する条件というのは、国有財産からいかに多くの収益を上げるかという考え方からのようなのですが、それでよいのかとの疑問は残ります。国の財政は赤字であり、それを少しでも改善したい、ということが財務省の立場であることは理解できる一方で、住民も近隣の国有財産は税収入にできるだけ活用すべし、という立場を受け入れてよいのかどうかです。せめて50年先のことを見すえた検討が望まれます。

 

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駅前に何もつくらないことが見識(2024-12-18)

駒場東大前駅西口の国家公務員住宅跡地の再開発について、住民アンケートが集約され、目黒区を通して関東財務局に伝えることになるようです。どのような意見が出ているのかはわかりませんが、何もつくらない、という要望もあるのではないでしょうか。

暴論ではありません。目黒区の姉妹都市である金沢市で実施されたことです。1990年から2010年までの5期20年の期間金沢市長をされた山出保氏の著書『金沢を歩く』(岩波新書)にそのことが紹介されています。

 石川県の県庁舎が金沢城の南側にありました。築後約80年が経過していたのですが、当時の石川県知事が1993年に駅西地区への移転を表明します。その跡地については、「跡地の扱いは急がないほうがいい知恵が出る」(知事、市長)、「兼六園文化ゾーンとして考えよう」(知事)、「跡地利用のコンセプトは緑と歴史と国際性だ」(市長)といった意見で県知事と市長は一致していたそうです。

その後2002年にNHK金沢放送局から当該県庁跡地への移転要望があったのですが、アンテナの移設を含むことから、否定されました。このこととは別に、跡地利用についての議論は、県、市、学識経験者によって検討され、議会での議論も続いていたそうです。県からは「未来型図書館を核とした多機能複合施設の整備案」も示されたのですが、森喜朗元総理から「跡地はセントラルパークであるべき」との提起があって次第に県議会での議論も収斂されていったとのことです。

「いま「何もつくらないことの贅沢」が、ここにあります。思えば思えば加賀藩の歴代藩主は、城とその周辺に豊な緑をつくり、育て、守ってきたのです。(中略)戦後日本の都市が、土地をコンクリートで固めたことが、重大な災害を招く原因にもなっていることを忘れてはなりません」と、しめくくられています。

 以上は金沢市でのことなのですが、金沢城主であった加賀前田家がその江戸上屋敷の文京区本郷からこの駒場の地に、貴重な文化財の保存場所と邸宅を構えたのは1930年のことでした。目黒区立駒場公園・重要文化財旧前田家本邸への入口、それだけではなく、東京大学という日本を代表する大学・研究機関の入口となる駒場東大前駅の前にある国有地を、そこで期待できる収益をベースに利用方を決めてよいものなのか。「何もつくらないことこそ見識」(山出保元金沢市長)という見方ができるかどうかが、関係者に問われているような気がします。

 

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