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2021年8月

アフガニスタン情勢ー3(2021-8-30)

友人から届いたアフガニスタン情勢についての解説、第3弾を掲載します。

「アフガニスタン地域を平定した二つの帝国」

 歴史上、この地域を平定したことがある外部勢力はアレキサンダー大王と以前述べたモンゴル帝国軍のフラグ(ジンギスカンの孫。フビライの弟。イルハン国を建てた)の2人だと思います。

 アレキサンダー大王は、この地を征服後、今のアフガニスタンのバルブ近辺でロクサネと結婚(皇后妃。側室ではない)、部下にも東方の女性との婚姻を推奨して、ヘレニズム文化を築き上げました。アレキサンダー大王死後は、この地はセレウコス朝シリアとなって存続しました。因みに、中央アジアではアレキサンダー大王の足跡は語り継がれていますが、彼は一般住民にはマケドニア人と呼称されています。アレキサンダーと言っても皆分かりません。

 中央アジアでは、侵攻モンゴル帝国軍の残虐性が今も語り継がれていますが、モンゴル帝国軍は、他の中東諸侯が手をこまねいていた暗殺集団の「山の老人」を一気に平定しました。これには、モンゴル帝国軍が現地のしがらみに一切関係していなかつた事も関係しているように思えます。イスラム教、特にスンニー派、はイスラム共同体の内では皆は平等との観念があり、ジハード等イスラム教義に基づく主張は、異端と断定されない限り、テロ集団であろうともむげに否定することは出来ません。加えて、中東の人は、血筋、婚姻関係など血統を重んじます(スンニー派、シーア派の対立も結局は預言者マホメットの血統は誰かの争いです)。モンゴルから来たモンゴル帝国軍にはこれらのしがらみが一切ありませんので、平定に躊躇なかったと思います。中央アジアでは、オトラルとかサマルカンドとか、モンゴル帝国軍が住民全員を殺戮したと今も語り継がれる遺跡が沢山あります。モンゴル帝国軍は「山の老人」一派も躊躇なく皆殺しにしたのではないでしょうか。

 「中国とタリバンの関係」

イスラム教徒は無神論者を忌み嫌い、中東での最大の罵り言葉は「カーフィー」つまり無信心者です。従って無神論者と見る共産主義者も嫌いで、同盟関係まで進展する事は望めないでしょう。ただ、利益を共有できるなら協力関係を求めることも現実政治上可能です。ここは、タリバン次第ですが、タリバンとしても中国のウイグル弾圧は原則として看過できない問題でしょうし、どうなるか分かりませんが、タリバンと中国との協力も十分あり得ます。他方、タリバンがウイグルへのテロ集団を匿うなど中国と対立的関係になった場合、中国はイスラム社会とのしがらみもありませんし、又西側諸国のように人権を考慮する事も無いので、モンゴル帝国軍のように一気に平定することも出来るかも知れません。中国のウイグル弾圧、香港弾圧の手腕を見ていると極めて効率的にこれを実行できる能力と政治システムを持っているように見えます。そのような状況になった場合、チベット弾圧の経験もあり、どうなるか興味あります。タリバンと組んでISに当たるケースもあり得ると思います。

 「アフガニスタンの関係諸国」

他方、アフガニスタンは、ユーラシア大陸の中心、いわば渦巻の生じる所で色んな勢力が引き込まれて来ます。

(中国)

中国は、以前より中央アジアに関与する意思を持っていたと思います。理由としては、独立を果たした新興諸国に経済的に進出すると共にイスラム過激主義がウイグルに飛び火するのを防ぐ為です。そのためにテロ共同対処目的の上海条約機構を発足させていますし、治安関係の無償援助なども実施して来ました。援助で機器を供与すると取り扱いの為に技術協力が必要となります、中国は、技術協力の為に中国に来訪する中堅職員に国営企業を通じて面倒を見、その関係は当該職員が帰国後も続きます。そのようにして、治安関係のみならず経済社会関係面でも少しずつ中央アジアに進出してきていましたが、アフガニスタンについては、紛争が続いていることもあり、余り関与はして来ていませんでした。しかし、習近平以来、一帯一路を打ち立て、中央アジアに出来るだけ関与しようとしていると思います。アフガニスタンについても、最近は、アフガニスタンで銅山の利権、その銅を搬出するための鉄道の敷設プロジエクトなどへの関与を図っています。米国が撤退した今後、益々関与を強めようとすると思います。その際、上海条約機構は軍事行動も含むものであり、アフガニスタンの治安を回復する上でも重要なツールになり得ます。

(ロシア)

ロシアにとり、アフガニスタンはロシアが裏庭と認識する中央アジアに隣接する地域で、出来れば自国の勢力圏に組み入れたい、またそこでのイスラム過激主義が中央アジア諸国に飛び火する事は阻止したいと思っていたと思います。しかし、ロシアは10年間アフガン戦争を行い撤退せざるを得ませんでした。武器供与など米国の強力なムジャヒディン支援があったこと、イスラム諸国からの義勇兵を止められませんでした。また、その直後、ソ連は解体し、中央アジア諸国はロシアから独立しました。しかも、現在、ロシアは、クリミアやウクライナ、チエチェンなどで問題を抱え、もうアフガニスタンに全面的に関与する余力はないように見えます。しかし、中央アジア地域はロシアに直接隣接する地域であり、中国等の外部勢力が大きなプレゼンスを持つのは阻止したいはずです。まだキルギスには軍事プレゼンスがありますし、テロ共同対処を目的とする上海条約機構のメンバーでもあります。行く行くは中国と連携するとしても、関与を図って行くでしょう。

(米国)

米国は撤退する事になりました。しかし、アフガニスタンは地理的にユーラシア大陸の中心に位置し、地政学上重要な位置にあります。軍による介入は終了するにしても、CIAなどにより、アフガニスタン内の勢力と連携しつつ、関与していくだろうと思われます(IS相手にタリバンとの協力もあり得るかも知れません)。事実、過去の北部同盟等を通じての関与の方が、軍事侵攻より予算も少なくて済み、遥かに効率的だったと思います。ただ、米国は民主国家なので、秘密工作を継続するのは政治的に難しいところがあるかも知れません(過去も、イラン・コントラ事件やアググレイブ刑務所等暴かれて政治問題化しました)。それに、米国は海洋国家です。内陸国のアフガニスタンには、本格的侵攻に至らない武力行使は実施しづらいところがあるかも知れません(本格的侵攻に至る前に、米国が武力介入する場合、通常海上艦艇より航空機ないし巡行ミサイルなどを打ちますが、アフガニスタンは海から遠い上、イラン上空を飛ばなくてはなりません。武器援助などの間接支援は除き、パキスタンや中央アジア諸国より直接武力攻撃するのは当該国の同意を得るのが難しいと思います)。

(パキスタン、インド)

パキスタンは、インドとの対立上、後背地に友好勢力を確保する必要があり、タリバンを結成させ、支援して来ました。今後も、パキスタン情報機関はタリバンとの関係を維持し続けるでしょう。ただ、パキスタン内にいるパキスタン・タリバンはパキスタン政府の意向に従わない実質テロ集団であり、出来るだけこの組織とタリバンの関係を絶とうとはするでしょう。インドは、カシミールはじめ国内のボンベイ等におけるテロ防止のために、アフガニスタンでの対タリバン工作を続行すると思われます。

(イラン)

イランは、タジキスタンが文化的、言語的にイラン系であることから、タジキスタンとは友好関係があります。しかし、タジキスタンはシーア派です。武装勢力の支援という面からは、イランは、今までもレバノンやシリア、イエメーンなど基本的にはシーア派を支援して来ています。従って、タジキスタンを通じアフガニスタンに介入する事は余り無いのではと思います。同じく、北部同盟のタジク族との関係も特に強いという訳ではないと思います。北部同盟では、マスード将軍の息子がタジク族の指導者のようで、血統を大事にする中東ですから北部でのその勢力は侮れませんが、彼は英国士官学校で教育を受けたと言われますし、欧米の影響力の方が強いのではないでしょうか。アフガニスタンにおいて、イランにとり重要なのはシーア派が多いハザラ人です(モンゴル系。タリバンは、彼らの居住地にあるバーミヤン仏像を破壊しました)。

(中央アジア諸国)

アフガニスタンの他の重要なプレイヤーは周辺の中央アジア諸国です。武器援助などをアフガンニスタンに行う際や各種の浸透工作を行う際の基地を提供し得ます。これらの国は、自身もイスラム過激派を国内に抱え、アフガニスタンのイスラム過激主義が自国に飛び火する恐れから、従来よりアフガニスタンに関与して来ました。ウズベキスタンは、ドスタム将軍に北部のウズベク族を率いさせると共に、米軍機にアフガン国境沿いのハナバード基地を貸与しておりました、しかし、アンディジャン事件(フェルガナ地方で政府側治安組織が過激派数百人を殺害した)が起きた後、国内政治上の理由で米軍には撤退を求め、代わりに秘密裏に国境沿いのテルメズにドイツが軍用機を定期的に運航していました。この措置はその後終了しましたが、今回のカブール脱出劇ではドイツ軍機はタシケントに飛んでおり、ウズベキスタンとドイツ軍は今も連絡はあると思います。タジキスタンにも今は終了していますが、米軍基地があつたと思います。キルギスタンには今もロシアの軍事基地があります。以前は、仏も基地を置いていたと思います。これらの国は上海条約機構に参加して、ロシアや中国と共に共同テロ対策の軍事演習も実施しています。だからと言って、上海条約機構のみに依存する訳ではなく、同機構に力が無いと判断すれば、あるいは当地域が特定国の影響下に入るのを防ぐ上でバランスが必要と考えれば米国や欧州とも協力するでしょう。以前、米国に協力してアフガニスタンに介入した際は、ロシアにはもうアフガニスタンに介入して過激派を制圧するだけの力が無いと判断していました。しかし、今は中国が力を持っていますので、勢力バランスを考慮しなければ必ずしも人権にうるさい欧米諸国と協力する必要も無いかも知れません。なお、中央アジア諸国の中では、トルクメニスタンは永世中立を標榜しており、如何なる関与もしていません。又、カザフスタンは地理的にアフガニスタンと離れている事もあり、今までも中継経路の提供などを除き余り関与はしていません。

(トルコ)

トルコは、以前より、トルコがテユルク族を纏めると言う汎トルコ主義があり、エル・ドアン大統領始め歴代大統領もその構想の夢を持っているようです。トルコが自らの発祥の地とする突厥の記念碑が中央アジアや東トルキスタンにあり、そこを訪問するなど思い入れを持っています。しかし、中央アジアにおける国々でテュルク系はカザフ、ウズベク、キルギス、トルクメで、タジクやアフガニスタンのパシュトン人はアーリア系でイラン人に近いです。それに、トルコに汎トルコ主義の盟主に見合った影響力を中央アジアまで及ぼす経済的、軍事的実力が無い以上、中央アジアで政治力を発揮するには無理があるかも知れません。ただ、どのような状況の下になるか分かりませんが、軍要員や技術要員の派遣、イスラム有力国(旧カリフ国)としての象徴的な役回りなどあり得るかも知れません。

 「日本のアフガニスタンにおける立ち位置」

 さて、上記状況のなかでの日本との関係ですが、日本は、イスラム教とのしがらみもありませんし、西側諸国のように西洋文明を押し付ける価値観もありません、又長年の善意の経済協力により中東諸国の信頼を築き上げて良い印象を持たれています。従って、日本は、武力で制圧するモンゴル帝国軍方式は出来ない反面、アレキサンダー大王の融合方式で関係を強める事が出来ると思います。

 しかしながら、関係強化と言ってもタリバンがどのような集団かにもかかっています。価値観が余りに相違していれば協力関係は築けません。タリバンは神学生と言う意味で、タリバン運動は社会の不正義を正すために立ち上がった神学徒という事になります。神学生はイスラム法学者(ムッラー。イスラム法の解釈を人々に説き、指導する立場で、キリスト教の神父や仏教の僧侶に相当)に向けて勉強している人です。中央アジアの地方でイスラム法学者や神学生と時折出会いますが、髭を生やし、ターバンを巻き、中東風のいでたちですが、話すと温和で、教養があり地域社会や住民に溶け込んでいるとの印象があります。そのような神学生が結成したタリバンは、イスラム教義を独自解釈し、戦争ごっこを楽しんでいるアル・カイダやサダム政権の崩壊により職業と地位を失ったスンニー派の元治安関係者と欧州などから渡って来た殺人狂のような変質者が合同して作ったISとは、性格が異なる組織のような気がします。アル・カイダとは、長い付き合いですから、タリバンの指導層と姻戚関係になる等関係が密接になっているかも知れません。だからと言ってタリバンがアル・カイダのテロ路線に同調するわけでもないと思います。そもそも、アル・カイダがまだ存続しているかも明らかではありません。また、根無し草で出自の悪いISとは親戚関係など密接な関係になっているとは思えません。なお、イスラム法学者は異端者には躊躇しません。イラン革命の端緒を作ったのはテロ活動で社会騒擾を醸成したムジャヒデン・ハルク(学生主体の共産主義とイスラム主義を合体したような過激組織)ですが、イスラム政権は政権獲得後これを異端者と断じて、一気に壊滅させました(片端から逮捕して殺しました)。今後、タリバンとISとの間でも同じ事が起こらないとも限りません。タリバンが米国あるいは中国と組んで最新兵器を導入すれば、異端者に対して無用な躊躇をする事なく、徹底的な攻撃をすると思われ、如何なる結果になるか興味が持たれます。

 中東の政治運動については、「アラブの春」とか「イスラム過激主義」とか言われ、それ自体で動いているように見られますが、大きな政治変革をもたらした運動は住民と密接に繋がった運動です。アル・カイダやISでは、日本が協力する余地はありませんが、タリバンが住民に根ざしている集団であり、アル・カイダやISとの政治的関係も断ち切れているのであるならば、日本も今後の協力の可能性もあり得ましょう。そういう訳で、タリバンが如何なる組織かによって日本との関係も決まって来るのではないでしょうか。

 ただ、タリバンもアル・カイダやISと同様のテロ組織で、世界にテロを輸出する基地になったり、テロ集団を匿ったりするに至った場合、シリアのIS壊滅作戦の際は、米、ロシア、トルコ、クルドが暗黙の共同作戦をしたと思いますが、そのような国際的な共同対処が必要になるでしょう。昔の信託統治のような発想も出て来るかも知れません。

 いずれにせよ、あと、数か月あるいは最悪数年経つて混乱が沈静化しないとタリバンの思想、組織、統率力、他勢力との力関係など、アフガニスタン情勢の真の姿は見えて来ないでしょう。

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アフガニスタン情勢ー2(2021-8-21)

友人によるアフガニスタン情勢分析、その2回目を掲載する。

それにしても、中国が随分関与して来そうで興味が持たれますね。中国は前から中央アジアには進出しようとしていましたが、元々中央アジアの人は歴史的経緯から中国が嫌いですし(侵略的と見ている)、加えてイスラム教徒は無神論者(中国のような共産主義者は無神論者と考えている)をキリスト教徒のような異教徒や仏教徒(偶像崇拝主義者)など以上に嫌います。ですから、中国が進出しようとしても、そう簡単ではないかも知れません。加えて、この地域は、ロシアにとれば旧支配地域ですし、インドもパキスタンとの関係で関心があり、他の中央アジア
諸国も地域が特定国に支配されるのは好まず、米国も中央アジアの中心地域として取っ掛かりの維持を図るでしょうからどうなる事やら。

アフガニスタンの地域は、昔より野蛮な勢力が跋扈する山岳地帯で外部勢力には平定出来ない地域と見られていましたが、歴史上モンゴル帝国には平定されています(イル・ハン国、チャガタイ・ハン国)。モンゴル侵攻時、中東地域は、マルコポーロが東方見聞録に書いた「山の老人」率いる暗殺教団が暗殺つまり現代で言えばテロを駆使して絶大なる権力を奮い、十字軍、諸侯とも長い間対抗できないでいたところ(イスマイリ派のにザール分派。イラン北部山岳地帯に本拠を構え、彼らの活動がハッシシやアサシンの語源となった言われる)、現地に到来したモンゴル軍は「山の老人」の事を聞き、暗殺手段を不正義として、一気に平定してしまいました。

皆殺にしてしまったと言う説と住民を離反させたと言う説とがあります。テロを政治手段として猛威を奮い、他の勢力がこれを平定できずに手をこまねいている状況は、何となく現代のイスラム過激派の跋扈と似ています。勿論、モンゴルと中国は異なりますが、東アジア人が猛威を奮ったテロ集団を現地の経緯や相互関係に拘らず一気に平定し、地域を支配した歴史はあると言う事です。つまり、中国がこの地域に支配を及ぼしたとしても歴史的には不思議なことではありません。

ただ、一方で、米国やロシアが再介入して来る可能性があるかもしれません(内乱時CIAはウズベキスタン経由で北部同盟を支援しました)。また、中央アジア諸国など周辺国が特定国や勢力による完全支配を牽制する為米国やドイツあるいロシアのプレゼンスを求める可能性もあります。また、トルコも汎トルコ主義で関わろうとするかも知れません。タジクはイラン系ですが、イランはどうしますかね。状況によつては、再び内乱となる惧れもあります。

今後の推移が興味が持たれますが、タリバンの指導部の思想、タリバンがどの程度組織化され、統率が保たれているのか、かつての北部同盟やハザラ部族との折り合い、アルカイダやIS、パキスタンでタリバンを名乗る勢力(実質テロ集団)との関係などがタリバン政権がアフガニスタンの国としての一体性を保てるか、政府として統治能力があるのかを知る上での指標となりましょう。

 

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アフガニスタン情勢について(2021-8-19)

アフガン二スタン情勢についての田中均さんの解説がYuouTubeで公開されている。

https://www.youtube.com/watch?v=UJqkd3cAxJw

これについてこの方面に詳しい友人からコメントがあったので以下に紹介する。

田中さんの話で言えば、米国がアフガンを攻めた際のタリバンの態度は、アルカイダを支援すると言うより、米国に対する無知からどのような結果を招くかを理解せず、ただ同胞のイスラム教徒を異邦人に引き渡すわけにはいかないと言う建前の立場が強かったような気がします。
それに、タリバンは、タジク人を代表するマスード将軍、ウズベク人を代表するドスタム将軍に対してパシュトン人を代表する勢力、いわば住民を基盤として発生した勢力で、根なし草のテロリストが結成したアルカイダやISとはそもそもの出自、起点が異なり、アルカイダやISのようなテロ組織とは協力・支援関係にはならないのではと思われます。

北部同盟のマスード将軍もアルカイダに暗殺されましたし、アフガニスタンの過激勢力はテロ集団とは目指すところが異なっている可能性があります。革命を輸出するかどうかの争いは、ロシア革命のトロッキー、イラン革命のムジャヒディン、キューバ革命のゲバラ等ありますが、一国革命主義が勝つのが殆どです。つまり、西側が恐れているようにタリバンが積極的にテロを輸出する可能性は余り高くないのではと思います。それでも、アフガニスタンが国際テロの温床となれば国際管理(国際共同攻撃)の対象になるでしょうね。

ただ、タリバンはイスラムに基ずく統治を行うと言っており、これが女性の地位等で西洋の価値観と合致しない場合、自分等の人権・民主主義が文明の一番の発展形態と自認する欧米諸国が如何に出るかは分かりません。日本人はどうなのでしょうかね。政府は、西側との連帯上、女性の権利等が認められなければならないと騒ぐでしょうが、世論は女性の地位などにそこまでこだわるか疑問です。

また、今後、中国は積極的に出て来ると思います。歴史上、中国は国内統一を果たすと大概が国外遠征を行い、為政者の権威を誇示しようとしますが、習主席は、既に明の永楽帝の鄭和の遠征をなぞり、南シナ海に版図を広げていますが、次は、漢の武帝の張騫の大月国歴訪をなぞり、アフガニスタンまで勢力圏を広げれば、中国史上最大版図を達成した人物になれます。習主席は文化革命で殆ど基礎的教養を勉強していない人物ですからそんな事を考えていても不思議ではないです。もつとも、アフガンニスタンを押さえたら、北朝鮮、韓国は朝貢国になりかけていますし、次は元寇でしょうね。

あと、これは田中さんも言っていましたが、米国そして日本も、西部劇と同じで制限戦争の概念が余りありません。台湾有事でも尖閣有事でもすぐ全面戦争を想定したような議論が行われますが、もっと制限戦争の概念を取り入れる必要がありますね。アフガニスタンでも同じことです。

 

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目黒区でのオリンピック関連映像が世界に(2021-8-4)

目黒区三田にあるポーランド大使館の映像が世界に発信されている。ベラルーシの陸上選手が帰国を命じられ、亡命を希望したところポーランド政府が受け入れ、目黒区のポーランド大使館の映像が流れたためである。大使館の所在地は目黒区三田で目黒清掃工場のすぐそばにある。羽田空港での保護からポーランド大使館到着、大使館を出発して成田空港に向かうまでの一連の流れは、ベラルーシ関連の重要な事件として、これからも映像や写真で世界中に流れることになりそうだ。

 ベラルーシという国は日本ではなじみがないかもしれないが、今年の5月に国際線旅客機を強制着陸させて乗っていたジャーナリストを逮捕するという事件は記憶に新しいだろう。オリンピック選手の亡命を申請した最中に、ベラルーシュからの亡命者を支援する団体の責任者であるベラルーシ人がウクライナで不審死するという事件が起きている。これは偶然なのかどうか。いずれにしてもベラルーシはこれからどうなるのか。特にEUからは厳しい目で見られている。

 コロナの感染の拡大は日本だけのことではなく、世界各国それぞれ深刻である。オリンピックは平和の祭典ともいわれるが、アフガニスタン、シリア、エチオピアなどの内戦には何の貢献もできない。気候変動による南ヨーロッパの山火事もオリンピックの期間中のその発祥の国を襲う。

 オリンピックの個々の競技種目に感動はあっても、イベント全体についての評価は主催者の期待からは遠くなっているのではないか。世界の距離感の変化、国々の力関係の変化、国という枠組みに対する意識、そんなものが変わって来ていることがあるだろう。 東京2020のオリンピックの中で世界の人々に共通して最も記憶に残るのは、目黒区のポーランド大使館を舞台とする亡命劇になるのかも知れない。

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