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2021年6月

令和のプロジェクトX(2021-6-9)

7月25日に開会式を迎える東京五輪は、その日まで50日もない今もなお、このコロナ禍に何故開催するのか、という批判が目立つ。そういう記事が関心を持たれるからなのだろうか。

 

「緊急事態宣言下でも五輪を開けるか」という質問に対しては、「そのような場合でも安全に開催できるよう準備している」としても、緊急事態宣言は6月20日に解除されるだろうし、それから1ヵ月でワクチン接種が進む。にもかかわらず、緊急事態宣言を必要とする事態を想定しなくてはならない悲観的見通しは、危機管理の立場から必要としても、そうでない場合のことが無視されすぎているきらいを感じる。

 

悲観的に準備することは良い。問題は五輪が開催される時期にコロナが収まったような気分になった時にどうするのか、ということも準備しなくてはなるまい。日本国内だけではない。欧米が楽観的な雰囲気になっていることも予測できるし、すでにその兆候が見られる。現在立案されている大会中の外国人に対する厳しい行動規制が支持されるものなのかどうか。海外のメディアが報道する東京の映像を見る限り、現在まで日本がコロナで苦しんでいるようには見えないのである。

 平成12年から17年にかけて、昭和の高度成長期の技術開発の成果を題材にした「プロジェクトX~挑戦者たち」という人気テレビ番組があった。幾多の困難を乗り越えて、後世に残る技術開発プロジェクトを完成させるというドキュメンタリーである。その主題歌が中島みゆきの歌う「地上の星」。「名だたるものを追って 輝くものを追って」「地上にある星を誰も覚えていない」というのだが、このコロナ禍での東京五輪は、無数の地上の星たちが実現する大プロジェクトとしてとらえたい。

 2020年3月の延期発表から1年半の期間、出場できるかどうかの不安を抱えながら、コロナ禍でトレーニングを重ねてきたアスリートたち。当初からの猛暑の懸念に加え、コロナ禍という未曾有の苦難に、中止論の声という三重苦を抱えながら、五輪開催に向けて地道な努力を重ねている人たち。その結果としてのこれまでの五輪では見られなかった、派手さと交流のない静かな競技会。

 「東京2020」という令和のプロジェクトX。そんな地上の星たちの記録映像が作られるよう、密かに準備が進んでいることだろう。

 

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DXの世の中(2021-6-6)

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略語で、目黒区報では「デジタル技術の活用で、提供するサービスをニーズに対応したより良い方向に変化させ、業務や組織などを変革していくこと」と解説している。目黒区ではDX戦略課が新設され、これを推進する。9月1日に発足するデジタル庁の政策を住民に結び付ける役割を担うのであろう。デジタル技術の活用はこれまでも積極的に進めてきたが、業務や組織などを変革するまでには至ってなかった。

 DXの事例としてわかりやすいのは電話での受付体制。今回のコロナワクチン接種の予約は目黒区では電話とLINEで行われた。当然電話はつながりにくい。電話だけであれば、受付体制を拡大せよ、となったのだろうが、LINEで申し込めばスムースということで、できる人にLINEでの申し込みを代行してもらったという人が多い。電話受付の体制には経費がかかることは、それしかなかった時代を基準に考えると気づきにくいかもしれない。

 電話による受け付けは、聞いた内容を誰かが入力するということ。本人に代わって代行するわけだから当然その手間賃が発生する。それを税金で負担すべきかどうか、という話になるのである。

 行政サービスを利用する人は、デジタル技術になじまない高齢者が多いし、変化を嫌うだろうから、苦情覚悟となろう。それでもDXは遅かれ早かれ必須である。そんなことで、議論が活発になるのではないだろうか。

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