「人とは違う」を恐れない社会をめざして(2017-10-5)
駒場リサーチキャンパス内にある東京大学先端技術研究センターでは、日本財団との共同主催事業として、異才発掘プロジェクトROCKETを運営している。
対象は小学3年から中学3年までの子供たち。
○学校の勉強が出来すぎて周りとペースが合わない
○特定分野に興味関心がありすぎて、他のことにあまり関心を示さなくなっている
○特定分野に突き抜けた興味関心があるわけではないが、広く様々な分野に興味がある
○学習意欲が低下しているが、このままではいけないと深く悩んでいる
そんな子供たちを30名ほど集めて活動する空間を提供するものなのだ。
「彼らには彼らの新しい学びの場所と自由な学びのスタイルが必要です。それは決していまの学校教育システムと矛盾するものではありません。むしろ両輪であるべきだと考えています」とコンセプトが示されている。
そのプロジェクトで行われていることを紹介する本が今年4月に出た。伊藤史織著『異才、発見!---枠を飛び出す子どもたち』(岩波新書)である。
プロジェクトを運営する先端研人間支援工学分野の中邑賢龍教授はこの本でのインタビューでこう語る。
「2045年に人口知能が人間の知能を超えると言われています。その時代に勉強だけやっていては生き残れません。どんなに豊富な知識を持っていたとしても、ビッグデータを持つコンピューターにはかないません。今やっている勉強がどれほど役に立つかを考えると、勉強だけやっていれば良いという制度を変えていかなければなりません。」
「一つの町や地域など広いエリアをそのまま活用するアカデミックリゾートランドを作ろうとしています。体験を促進できる場所です。そこにあるコミュニティ全体が生きるための勉強の場所になるんです。」
ということでか、渋谷区との取り組みができた。
9月1日に渋谷ヒカリエで開催された、長谷部区長と中邑教授とのトークセッションを含むキックオフイベントでは、『ユニークな子どもに対する多様な学び方の価値をデザインする~渋谷区と東大先端研が描く未来の教育』と題している。
『異才、発見!』の構成は第1章が「枠をはみ出す子ども」、第2章が「特化した才能をつぶさない教育」、第3章が「特化した才能を伸ばすプログラム」で、第4章が「「人とは違う」を恐れない社会へ」として、子どもたちが日本の教育についての議論していることを紹介する。
教育委員会をはじめとする教育の現場は、この本をどう受け止めるだろう。学校教育での内容を対象とする議論のスケールが小さく見えてしまわないだろうか。是非一読して議論していただきたいものである。
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