パルミラから渋谷へ(15-05-17)
「イスラム国」の動静は最近の日本ではそれほど大きなニュースになっていないようである。今年の1月は日本人人質殺害事件があり、安倍総理がカイロでISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援することを約束したことに対する批判があった。しかし、その支援そのものがどうなったかについての関心は少ないようだ。日本から取材に行くことが困難なことに加え、この地域に対する日本人の関心が乏しいこともあるだろう。
シリアの人口は2012年には22百万人であったが8百万人が難民となり、うち4百万人は国外への難民となっているとか。2014年のシリアからEU諸国への違法移民の数は7万人近くに上っている。シリアに限らず、地中海のボートピープルはヨーロッパでは深刻な問題なのである。
ISIL(イスラム国)にすべての問題があるわけではない。「歴史的シリア」、「レバント」、「シャーム」などと呼ばれる、シリア、レバノン、パレスチナ、ヨルダンに加え、トルコ、イラク、サウジアラビア、エジプトといった旧オスマントルコ領の国々の歴史と現在の外交問題は極めて複雑で、日本で騒いでいる外交諸問題などは世界の視点からするとたいしたことではないのだろう。
だからこそ日本も世界の動きを考える上で、歴史的シリアでの問題を看過するわけにはいかないのである。
この3月、ドイツ、イタリア、スペインからの訪日外国人の数が前年比で30%を超える伸びを示している。アジアの国々からの来訪客の伸びは海外への観光旅行が増えていることに大きな理由があるにしても、これらのヨーロッパの国々からの観光客は、安全面で不安のある中東やアフリカから旅行先を日本などの比較的安全な国々に切り替えているのではないかと推測する。
中東は世界遺産の宝庫でもある。その世界史における重要さは、日本にある世界遺産とはスケールがちがうといってもよい。中でもパルミラの遺跡の重要性は計り知れないほどらしい。
そのパルミラにISIL(イスラム国)が迫っていると報道されている。占領されれば世界遺産は破壊されてしまう可能性が高いという。
渋谷で見かけることの多くなったヨーロッパからの観光客も、もしかしたら、パルミラなど観光ができなくなった場所に行きたかったのかも知れない。

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