江戸しぐさ発祥の地から(2015-04-06)
4月6日の東京新聞「こちら特報部」で江戸しぐさが大きくとりあげられている。
〇「江戸しぐさ」資料の裏付けなし。
〇国や自治体がもてはやす。
〇道徳の教材で学ばせる。
〇伝統を隠れみの・・・「科学軽視危うい」
といった大きな文字が紙面に踊る。
昨年度から文部科学省の道徳教材に取り上げられてからその知名度が上がり、批判の対象になったのであろう。
江戸しぐさは、平成11年に逝去した芝三光(本名小林和雄)が目黒区大橋で昭和49年に発足させた「江戸の良さを見直す会」で、江戸町衆の口伝伝承を「江戸しぐさ」と名づけ、駒場の住区センターなどで、特にPRすることもなく勉強会を行っていた。講元として活動したのが弟子の和城伊勢氏。芝三光の没後は会の代表となった。
目黒区の大橋・駒場地域でほとんど会員限定で江戸しぐさの勉強が続けられてきたのである。
積極的にPRしたのは平成3年に芝三光に師事することになった越川禮子氏。平成19年にはNPO法人「江戸しぐさ」を設立した。積極的な展開は必ずしも芝三光の本意ではなかったようでもある。「江戸しぐさ」はNPO法人により商標登録もされているとか。
そして今年の1月には一般社団法人「芝三光の江戸しぐさ振興会」が誕生し、和城伊勢氏が理事長となっている。
道徳教材への取り上げについては、こちら特報部が取材し「NPO法人江戸しぐさのホームページなどを参考にした」という道徳教材編集作業部会の主査を勤めた人と「道徳教材はNPO法人の主張を参考にしていない。江戸しぐさが歴史的な事実だとはいっていない」とする文部科学省教育過程課の課長補佐のコメントが出ている。文部科学省は江戸しぐさという言葉を使っている関係者へのヒアリングをせず、歴史的事実とも認めない「江戸しぐさ」を教材に使っているのだろうか。
江戸の良さを見なおす会として最後に2012年4月から13年3月にかけて開催した江戸しぐさ講の第1回は以下の言葉からはじまった。
「江戸しぐさという言葉が、その本質の理解を伴わないまま一人歩きしています。芝講師が「江戸しぐさ」と名付けてその普及活動に人生を費やしたのは、決して表面的な「お作法」の伝播のためではありません。残念なことに、今日江戸しぐさと聞いて大多数の方が思い浮かべるのは「傘かしげ」や「こぶし腰浮かせ」に代表される表面的なものばかりです。これらは江戸しぐさのほんの一部であって、マナー講習やハウツーもので便利に使われる単なる道具でしかありません。」
そして12回目の最終回に「江戸しぐさ」は生活に大事なものを共有し「共生」するという暮らしです!と結んだのである。
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コメント
江戸しぐさの事は少し知っていますが、歴史的事実は別としても教材としては素晴らしいと思います。
歴史的事実としても、すべての内容が間違っているのですか、私にはそう思えません。
歴史そのものも何かの資料、口伝に基づき作られているでしょう。すべて完璧だと思えません。マスコミが批判の部分だけを載せるのはどうかなと思います。双方の考えをうかがって読者に選択権を与えるべきではないでしょうか。
投稿: ゆうじろう | 2015年4月 7日 (火) 07時18分
コメントありがとうございます。ご指摘の通りと思います。元々「江戸しぐさ」は広く伝えるというより、講という内輪の集まりで勉強しようという趣旨のものでした。それを商品化する人が現れ、だんだん一人歩きを始めたものといえるでしょうか。「江戸しぐさ」の考え方は俳句の句会とも共通するものがあるので、基本的には歴史的事実を背景にしていることは否定しがたいでしょう。
投稿: 管理人 | 2015年4月 7日 (火) 09時00分