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書評:『日本経済はどこで間違えたか』(14-2-18)

著者の菊池哲郎氏は毎日新聞社で経済部長、論説委員長、常務取締役主筆を歴任したジャーナリスト。しかし「スタジオでコメンテーターなるおかしな集団が、そこら辺の主婦の見識をはるかに下回る、だから次も出してもらえる意見を述べて金をもらっている」類ではない。経済部の新聞記者として、40年以上もの間、日本の金融財政政策を立案実行してきたエリートたちの側にいた経験から、現在1000兆円にものぼる国の借金の恐ろしさと、そこに至った経緯を紹介するというのが本書である。

日本の税収は初めから全額が国債費と社会保障に消えることが決まっている。一般会計と特別会計を合計した国の1年の経費は223兆円。そのうち政策経費として使えるのは全体のわずか13.8%でしかない、30兆8千億円というのである。すべて国の借金でまかなわれているという計算になる。
「前年度主義から抜け出せない官僚主義と、前年度主義を新しい法律を作って変える意図も能力もない国会という組織体の構造そのものに、最大の問題がある」。その結果としてか、政府の存在意義が人口の高齢化に対応した年金、医療、介護を基幹とした社会保障費の補助をするということに変わってしまった、というのである。

そうなってしまった今、1000兆円の借金を担保する能力が日本にはあるという国際社会での信用力が不可欠になった。「日本という存在の信用性を常に維持し高めていく政策と行動の連続しかない」「一人ひとりが日本という存在の信用力保持の歯車であることを、もっと意識していかなければいけない瞬間に入ってきた」という結論となる。

また、随所にマスコミ批判がちりばめられている。日本社会はいったん事があると、新聞もテレビも週刊誌も連日自分達自身が情報を制限し始め、抑えが効かなくなる姿に唖然とした。特定秘密保護法に反対しているが、実際に何かことが起きて情報制限するのは、意外にも政府ではない。言論統制は、頼まれも何もしないのに言論機関自身が自己保身のため進んでやるのである。といった具合である。

内容は難しそうではあるが、著者独特の調子でユーモアを交えて書かれた本書は、読みやすい平成日本政治経済史といえるだろう。将来の日本を考えるための基本知識を得ることができる貴重な一冊といえないだろか。


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