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リケジョの勲章(13-11-10)

この秋の叙勲で科学者の中西準子さんが瑞宝重光章を受章した。叙勲者合計4193名の内女性は347名で、8%となっている。勲章のランクは、大綬章、重光章、中綬章、小綬章、双光章、単光章で、受章者の数はそれぞれ11名(0)、52名(2)、315名(8)、964名(10)、1577名(124)、1274名(203)となり、カッコ内が女性の内数である。中綬章以上の女性比率は受章者全体での比率より更に低い。

勲章制度は、国家又は公共に対し功労のある方、社会の各分野における優れた行いのある方などを表彰するもので、中綬章以上の受賞者の顔ぶれをみると、政治家、官僚、裁判官、大学の学長などを経験された方々が大半となっている。たとえば、大臣や副大臣を経験するかどうかで勲章のランクが変わるから、個人の名誉に関わるということで、叙勲の対象となると期待している人たちはいろいろ気にするのだろう。

中西準子さんの場合、いわゆる出世競争で頂点に立った多くの受章者とは異なる経歴の持ち主である。大連生まれで敗戦の苦労を味わい、横浜国立大学から東大大学院に入り、都市工学科の博士課程を終えて助手になったものの学科の方針に反する研究活動をしたため昇進を妨げられた。1990年に環境安全研究センターという実験廃棄物の回収と処理をする部署の助教授になったのは50歳代に入ってからであった。93年に教授になった時には、東大の工学系で開学以来初の女性教授ということであったらしい。その後95年には東大の反対を押し切って横浜国立大学教授となり、そこでの提案から横浜国立大学の環境科学研究センターに危機管理分野の新設が文部省から認められることになった。

2001年には、つくば市にある産業技術総合研究所という工学系では日本でトップクラスの研究所の科学物質リスク管理研究センター長に就任。それは、これまであったポストを引き継いだものではないはずで、しかも還暦を過ぎてからのことであった。要職を歴任したのではなく、独自の仕事が評価されてきた結果といってよい。2003年に紫綬褒章を受章、2010年に文化功労者という栄誉である。その間、2005年には京都大学の教授から環境ホルモンに関することでの民事訴訟を起こされる事件もあった。学術上の批判が名誉棄損に当たるのかということで、話題になったものである。

「リスク」と「ハザード」とは違う。リスクを危険なことが起こる確率として環境問題を把握する仕事を、中西さんは若い時から一貫して続けて来た。しかし、新たなビジネスが生まれるような研究でも、多くの人に夢と希望を与えるような仕事をしたわけではない。ダイオキシンが騒がれたとき、それが危ないといわれる中で、もう少し冷静に、という意見を新聞などで発表していたのはただ一人であったとか。「誹謗中傷の中で数年じっとしていると、いつのまにか私の意見が多数意見になってくるという経験を何回もした」ことから孤立を恐れなくなったそうだ。そういう常に少数派の環境の中で、独創的で、環境評価に重要な手法を提供したことによる社会への貢献は大きい。

最近は理系の女子ということでリケジョとよび、女子高校生が理系の学部に進学することを奨励されている。日本の女性研究者の比率が先進国では最下位レベルということもあるらしい。ノーベル賞を目指すということはよく言われるが、叙勲は地位連動型の側面があり、おおっぴらに目標にするものではあるまい。しかし、行政を批判し続け、結果的には行政に多大な貢献をしたといえる中西さんが紫綬褒章を2003年に受賞し、2010年の文化功労者につづいて瑞宝重光章を受賞したということは、多くの研究者に希望を与えることになるはずだ。一方で、さまざまな場面で論破されてきた関係者には不快感をもたれていることも否定はできまい。現在も「福島の外部被ばく量は過大評価されている」といった反発を招きそうな意見を出している。

ちなみに文化功労者同期受賞者は15名で、王貞治、水木しげる、山中伸弥、吉永小百合の名前がその中にあるが、中西準子さんも、それらの人たちと同様にまでとはいかなくとも、もっと広く知られてよい人物である。少なくともリケジョの鏡として、高校生に知ってほしい。

(追記: 中西先生の『雑感』でご紹介をいただき恐縮しております。筆者は女性ではないかとのことご推測なのですが、駒場町会防災部所属の文系オヤジですのでその旨ここに記しておきます。 11月24日)

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