渋谷駅周辺繁華街のリスク(11-11-30)
渋谷は若者の街として知られている。古くは東京の都心に対する副都心として、新宿、池袋と共に買い物客の集まる街だった。1973年にNHK放送センターが新橋から移転し、渋谷パルコができて、公園通りが注目されるようになった。渋谷109とセンター街が渋谷イメージを作ったのは1990年代。それから20年がたっている。
その間、東京には、湾岸地区、六本木、表参道、丸の内、日本橋といった場所に次々と新しい魅力あるスポットが誕生する中で、渋谷は若者の街としての過去のイメージを引きずったまま現在に至っている。
そして渋谷ヒカリエが、これから始まる新しい渋谷の街づくりの第一弾として来年4月26日にオープンすることが発表されたのである。
しかし、その前途は決して楽観できるものではない。東日本大震災と原発事故の影響で、東日本全体の気分が沈み、東京観光どころではなくなっているだろう。東京近辺の人たちも、20年前はもとより、10年前と較べても出かける場所の選択肢が増えている。
渋谷ヒカリエ開業の4月26日から1ヶ月もたたない2012年5月22日には、地下鉄半蔵門線の終点駅でもある押上に、東京スカイツリーとその足元の東京ソラマチがオープンする。
東京ソラマチの売り場総面積は約52千㎡で、飲食やファッションなど310店舗が出店予定。
「Japan Experience Zone~日本を体感する」という1100㎡のスペースや、落語の林家一門プロデュースで寄席芸と下町の料理などを提供する「江戸味楽茶屋 そらまち亭」、ファッションブランド「サマンサタバサ」が手掛けるスイーツショップなども入る。民放各局の番組グッズなどを販売する「ツリービレッジ」、プロ野球巨人軍初の直営ショップも出店、といった具合に幅広い顧客層を対象とし、話題性にも富む。
海外からの観光客も、成田から近い浅草とスカイツリー・ソラマチを歩くだけ、後はバスで回って東京は終わり、ということにもなりかねない。
11月28日に開催された渋谷ヒカリエの記者発表では「最先端の文化やエンターテインメントが集まる街、エンタテイメントシティしぶや、を目指し、日本、世界中から集客し、日本一訪れた街にしたい」との東急電鉄の意思が明らかにされた。これをより広く地域全体で共有し、「エンタテイメントシティしぶや」という街のアイデンティティを形成していくことなしには、渋谷の現在の賑わいを維持することすら困難であろう。