まちづくりで目指すもの(10-11-14)
きのう今日と渋谷音楽祭をやっている。来週は渋谷芸術祭があり、21日には文化総合センター大和田がオープンする。百軒店では「SPACE WORKS 百軒店」というイベントが12月12日まで土・日主体に開催される。渋谷の文化活動は活発のようだが、それでも渋谷のまち全体の鼓動としては聞こえてこない。それぞれの企画が他の企画からは独立してくりひろげられているとはいえ、これらのイベントは渋谷全体のまちづくりと無縁のものではないはずだ。
渋谷のまちづくりは日本中どこにでもあるものとは違う。そもそも渋谷にまちづくりなど必要なのか、との見方が外部からはあるかもしれない。何もしないと衰退する、ということであれば、渋谷の各商店会としての対応となろう。すでに世界中から観光客が集まり、世界にその光景を発信する渋谷がどのようイメージを国内外の訪問者たちから持たれているのか。そして将来にむけてどのような可能性をもっているのか。日本全国で外国人観光客の多い、銀座、新宿、鎌倉、京都などとは違う魅力は何なのか。そんなことを掘り下げて渋谷のまちづくりを考えたいものだ。
渋谷の特徴は、①坂が多い、②道路が不規則、③小型ビルが多い、④高級住宅地が周囲を囲む、⑤鉄道の駅が多い、⑥大学が近い、⑦演奏会場・映画館が集積、⑧若者向きの店が中心、⑨性風俗店も目立つ猥雑性、⑩独立した商店街の集合体、といったところ。
一方で、渋谷に期待できないものとしてあげられるのは、①歴史遺産、②高級感・高級品、といったことになるのか。歴史遺産がないだけに、ハチ公や恋文横丁といった、それほどのことでもないような50年以上昔の物語を語り継ごうともしている。2012年春に完成する渋谷ヒカリエが宮益坂上で青山とつながることで高級イメージの渋谷エリアができるのかも知れないが、近隣のニーズに応える程度以上の規模にすることもないだろう。いずれにしても、現在の渋谷の特徴を活かしたまちづくり案のひとつとして、その来街イメージにまで踏み込んで考える必要がある。
現在のまちづくり活動は、2012年春には渋谷駅東口に大規模な超高層の再開発ビル「渋谷ヒカリエ」が完成し、その後は渋谷駅の建替え工事が始まるにあたって、地域社会と細かい調整が必要になっていることが背景にある。歩行による回遊性を高めるということのほかに、渋谷にどのような人がどのような目的で来るのか、どんな人に来て欲しいのか、ということまでは考えにくいようでもある。地域社会としては、これ以上来街者が増えるのは困るとの立場もあっておかしくない。
そんな中でまちづくりの目指すものを、将来のまちのイメージとして提示することがあってもよいだろう。その一つが国際的な文化芸術の街なのだ。
東大駒場キャンパスからBunkamuraにかけて、更にセンター街を横切り、タワーレコードからガードをくぐって明治通りを渡って国連大学までを世界の科学者や芸術家が交流する場としていくわけだ。
世界の研究者やアーティストが住んでみたいと思う環境整備は必要だろうが、基本はそうした場作りをビジネスにしたいと考える事業者が集まってくるだけでいい。駒場には海外からの留学生のための滞在施設、駒場Ⅰキャンパスの海外の研究者のための短期宿泊施設、駒場Ⅱキャンパスには長期滞在のための施設がある。国連大学本部もその周辺で宿泊や交流のできる場ができ、海外からの訪問者に歩いていけるこの街で飲食するのがいちばん楽しいということを知らせればよい。
そうしたまちづくりの主役は組織化されたまちづくり協議会でなくても、個々の事業者がネットワークでつながればできる。行政の支援を期待するとすれば、国際学術・文化交流に関係する機関ということになるのだろう。
そんな場の具体例としては、国連大学に近い「The Pink Cow」、道玄坂下の「ダブリナーズ」、神泉仲通の「開花屋」、松見坂の「コスタラティーナ」、山手通りの「クンバデュファラフェル」、そして今年松涛にオープンしたクレープの「ティロランド」、メキシカンバーの「ジャロピー」、コーヒーとワインの「パブリック松涛」の名があげられる。旧山手通りのヒルサイドテラスはちょっとフォーマルな会場ということになるのだろうか。
「渋谷ヒカリエ」とほぼ同じ時期、2012年の初夏に完成する南平台の超高層ビルにはイベント会場ができるので、そこも国際交流の場となるだろう。円山町のホテルがヨーロッパの小さなホテルのようになって、宿泊ニーズに対応できるようになるとよいのだが。
いずれにしてもこれは一例。いくつもの物語のあることが渋谷の魅力なのだ。
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