2007年の参議院議員選挙に向けての活動をはじめた時の、第1回「選挙・政界の秘密をみんなと共有するからね」から、今年の衆議院選挙が始まる前の「大臣の保護者たち」までの52回に渡る「政界不思議体験記」がおもしろい。
http://www.taniokachannel.com/taikenki/taikenki.html
筆者は参議院議員の谷岡郁子(くにこ)さん。いまではブログやツィッターで政界裏話がマスメディアを媒体とせずに、多くの人に伝わるようになっている。政治家の言葉の端々をつなぎ合わせ、読者に誤解を与えかねないような表現で関心を惹く傾向をもつジャーナリズムとは違い、直接本人の言葉によるものは信頼性はあるのだが、おもしろいかどうかは別問題。書いたもののおもしろさが議員の評価とはいえないだろうが、政治家らしくない文章を巧みに書く人には親しみを覚える。
政界不思議体験記」の第1回からその一部を引用させていただく。
・なぜ私が自らの健全なる直感とクールな知性に逆らい、私の直情を愛し心配してやまない家族や友人の憂いを無視して出馬することになったかは、おいおい判明するものとして、まずはっきりさせたいのは、予想どおり政治の世界はかなり倒錯した世界であり、選挙とは常軌を逸したものであることだ。「公職選挙法」なるものはなんとも理解しがたい旧時代の遺物で、なんにもできないくせになんでもありの変てこなものである。
加えて、現在出来上がっている選挙手法とは学者である私にとっては全く非科学的なものである。同時に、ひとりの日本の市民としての私にとっては不可解にして非常識である。四半世紀も教育者をやってきた私にとっては、反教育的で看過できない類なものである。野次馬としてならば、かなり面白いと言わざるを得ないだろう。
かわいそうに、私は、こんな状況に飛び込んでしまったのである。 もちろん悪いのは私であるが。
・おそらく多くの人が本能で直感的に感じて政治嫌いになってしまっている状況の背景にあるものを具体的に示すこともできるだろう。ひょっとするとそれが役に立つものかもしれない。市民がもっとしたたかになって、このおかしさの裏をかき、巧妙に投票したり行動したりしない限り日本人の生活は豊かにも楽しくもならないもの。
そして参議院選挙に当選し、初登院の日の第28回はこんな調子となる。
・国会議事堂とその向かい側の議員会館(地下道でつながっている)の間を行ったり来たりで国会議員というのはけっこう運動量の多い仕事だということが判明しました。そんなわけで、今現在の私は次々と新たな体験をしながらも、まだ国会議員としての実感はほとんどありません。何だか社会見学のツアーに参加しているような気分です。
早く馴れなくてはいけないという思いの一方で、この世界に馴れ過ぎてもいけないという思いもあります。馴れすぎることは、私に投票してくれた本当に多くの人と距離ができることでも有り得るからです。
それでも1年もたつと国会での質問はベテラン議員顔負けの迫力を見せている。
http://www.youtube.com/watch?v=U7JZjDGWIHM
そして議員になって2年目の今年の夏、議員になることなど夢にも思っていなかったアルバイトで事務所に来た女性の名前を比例名簿に書かかせて衆議院議員にしてしまった。1日で候補者を出せという「豪腕」オヤジの指令に「ドーダ!」と応えたわけだが、その胆力は並みではない。中京女子大学の学長を32歳の時から23年続けていて、理事長として学校経営の責任者でもある教育の専門家ならではということか。
これから与党議員として出番が増えるのだろうが、インターネット活用の手腕も楽しみだ。