渋谷WESTのトップ画面の右側、「地域社会情報」のトップは「公共情報」で、次につながる地域」があり、3番目は「くらしの科学」としている。地域社会とくらしの科学に何の関係があるのか、と突っ込まれそうなのだが、公共情報の一つとして、生活に密着した科学情報が必要だろうとの考えで、それにふさわしい、気のついたサイトを閲覧できるようにしているのだ。
「くらしの科学」でリンクしている二つの個人サイトでは、今月になって非常に重要と思われる意見が公開されている。
1月5日に中西準子さんのホームページでは、非加熱血液製剤の使用によるエイズ感染者が出たことから裁判になった事件にふれている。「安部英医師がなぜ無罪になったかが分かる-80歳の老医師を痛めつける理由があったのか-」を以下のような結論をもって論じているのだ。
「血友病患者に多数のエイズ感染者が出た。それは、非加熱血液製剤の使用によるものだった。被害が大きかった。それは、もちろん大問題である。そういう場合に、誰かが悪かったからこうなったという説明が欲しくなる。
それが分かると皆が納得する。悪い奴がいたから、こうなった。あいつをやっつけろ!
中世にも魔女狩りがあった。若い女が、逆さにつるされて火を付けられた。あれと同じだと思う。
どこの国にもこういうことはあるが、血友病患者のエイズ感染は世界的な問題である中で、こういうことが行われたのは日本だけだということを肝に銘じて欲しい。
こういうことは、エイズ感染者の救済にも、何のメリットもない。」
その中に「私の誤解」として、この事件についての一般的な理解があげられ、それに対して、『薬害エイズ事件の真実』という新著を読んで知ったということが書かれているが、詳細はリンクから本文を読んでいただきたい。
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak456_460.html#zakkan459
それから1週間後の11日付けで、安井至さんが「21世紀型リスク感覚」と題するコメントを掲載している。
「消費者に思い込みを作ることは、メディアの悪しき影響だと言える。しかも、問題は、そのような「庶民感覚」が最近のメディアがもっとも大切にする対象になっていることなのだ。(中略)
メディアがニュース性のある報道を好むこと、これは、当然であって、特に非難に値することではない。したがって、報道には常にバイアスがかかっている。そこで受け取る方が、それなりの逆バイアスを掛けて、ニュースの真相を解き明かすという対応をする必要がある。(中略)
(メディアの特性は)どうやら次の3つにまとめることができそうである。
*センセーショナル=危険好きで平穏嫌い=マスメディアにとっては、エビデンスが低い話ほど面白い
*メディアの正義観=個別被害や情報隠しを重視
*読者が期待する記事を書く傾向が強い
センセーショナルであることを求めることも、これはメディアが商売である以上、仕方が無いことなのだろう。(中略)
身の回りに、あまりにも安全な社会を作り上げると、人間のリスク検知能力は失われる傾向がある。そして、被害はかえって増大する。現在の日本の状況はすでにそのレベルに入っている。身近なリスクと地球レベルのリスクの理解力、そのいずれにもいささか不安がある。」
http://www.yasuienv.net/RiskUnderstanding.htm
身近な科学知識を知らないうちにマスメディアに依存していることに問題はないのか。ここで紹介したお二人の書かれたようなことはマスメディアではほとんど知ることができないだろう。個人的見解とはいえ、お二人とも環境・安全分野での第一人者であり、中西さんの場合は国の安全科学研究組織の長という立場なのでその発言は重いのだ。
政府よりもマスメディアを信頼するような一般的傾向も見られる。マスメディアからの情報量が多いということからに他ならないだろう。日常生活の多くの話題がマスメディアを情報源としていて、政府等の批判もほとんどマスメディアの受け売りだ。だから身近な自治体などのことは共通の話題にはなりにくい。
しかし、ジャーナリストには問題意識はあっても専門知識ではその分野の科学者には及ばないことはいうまでもない。テレビでは話芸の専門家にだまされてしまうこともあるだろう。そうしたことを避けるためには、科学者の冷静な発言が多くの人に伝わる仕組みが必要になっている。
そのためにも「暮らしの科学」の画面を充実させていきたい。